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る必要があります。都市化は、社会・経済開発と切っても切り離せないのです。たとえば、急速な人口移動が起こった場合、それをどのように阻止するのか。また、地方や田舎の地方から都市へ流れていく移動をどのように考えればよいのか。これが悪影響を及ぼす場合もあるし、良い影響を及ぼすこともあると思いますが、いずれにしても実体を把握したうえで、きちっとした政策で対処していかなければいけないと考えます。
ネパール国の都市化も同様です。今回の調査は、以前に行いましたいろいろな研究・調査の結果を踏まえ、またネパールの学者の方々からお力添えをいただき、その成果をまとめました。非常に面白い結果が出ております。
調査結果、及び政府の統計によりますと、ネパールで都市に住んでいる家族、家庭の世帯数の割合はまだまだ低い水準に止まっており、全国の世帯数に占める都市世帯の割合は非常に少なく、20%以下ではないかと考えられます。ネパールの都市化率は他の東南アジア諸国と比較して非常に低いのです。ブータンの都市化率がこの地域の中でもっとも低いのですが、このブータンに続いて低い数字がネパールです。
しかしながら、その反面、ネパールにおける都市化率の伸びは、他の隣接諸国と比べ圧倒的に高く、非常に急速な都市化を経験しています。
国連の出版物で1990年〜1995年までの都市化の推移をみますと、ネパールの都市人口の増加率は7%以上になっております。年率7%というこの都市人口増加率は、バングラディシュ、インド、スリランカ、パキスタンなどに比べると非常に高い数値です。
この都市人口の急速な増加に、注目しなければならないと思います。ネパールは、世界の中でも、低開発国です。経済的にもまだまだ低い水準にある国ですが、この数字は、都市化の増加率が非常に高いことを示しています。この都市人口の急速な増加は、潜在的な経済、社会的影響をもたらすことが当然予測できます。
第二点目として、今日のネパールの都市化に特徴的なのは、劇的に急増している人口移動です。ネパールは、山岳、丘陵地帯、タライという低地の3つの違った地理的な条件がありますが、1970年以降、特に山岳・丘陵地帯からタライの低地への人口の移動が顕著に見られます。では、なぜそのようなことが起きているのでしょうか。なぜ、人々が山岳・丘陵地帯から低地であるタライの方へ移動しているのでしょうか。大きく分けて2つ理由があります。
1つは、ネパールにおいてマラリアの撲滅が達成されたことです。昔はネパール、特にタライ低地はマラリアが蔓延し環境が悪かったのですが、そのマラリアの完全な撲滅が行われました。
もう1つは、このタライ低地の持つ2つのプル(誘引)要因です。それは、タライ地域に農業労働に対する需要と雇用機会があることです。

 

 

 

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